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私の疑問に答えずに、呑気に欠伸をしている。この動じなさはやっぱり、ヤスノリに間違いがなさそうだ。
ヤスノリこと堀康紀。
おそらくだが、私を帰す為にタカ君がヤスノリを呼んだのだろう。
紛れもなくタカ君の弟──と言うことで、私と兄弟みたいに育ったいわば弟であり、まぁ正直口煩い姑に似た存在と言うか……とりあえず、濃い付き合いをしてい『た』人物である。
『た』と表現したのは、私が彼に会うのは四年ぶりだから。
二歳下のヤスノリは、大学を卒業と同時に実家を出ていった。何をしているのかは全く教えてくれず、それとなくタカ君に聞いてもはぐらかされていた。
よって最近の彼の動向については全く知らされていない。
しかし何だ、この再会は。
*
とりあえず私達は、残っていた食パンを食べることにした。
つい先日まで、ヤスノリの席には元カレが座っていた。彼とは違い、少し窮屈そうに座っているのはさすが身長183センチの長身。
細長い身体のラインに、気だるげな涼しい目元の整った顔立ちは、多分格好いいというよりも『美しい』と表現した方がいいんじゃないかと思う。
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