弥生 満月 ありあけの

1/2
前へ
/89ページ
次へ

弥生 満月 ありあけの

『ぺんぎん およぎはやし やのごとし』 『こたつ めでたし』  毎日のように送られてくるひらがなの報告に、私はほっこりする。 (とうとう、ペンギンに、泳げる大きさのプール、作ってあげたんだ。だいぶ水がいるから、どうしようか、思案していたけど。きっとあの子、喜んでるだろうな) (こたつ、何なら私より、ハマってたもんな。意外と、寒がりなのかしら)  鬼のスローライフに想いを馳せながら、私は2週間後の荷造りをする。  満月まであと二日、十三夜の夜。 『こよいのつき うつくし あいたし』  いつもの美しいひらがなでつづられた文章に、私はどきりとした。  あいたし  すぐに薄れて消えていく、四文字のひらがなを見つめる。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加