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2021年5月27日、満月の次の夜。
私の目の前には、齢も背格好もばらばらな、4人の男の人がいる。
いろいろなことがあった、とは言ったけれど、まさか出会いから10年近く経過して、心から信頼していた人たちから、これほどの爆弾を落とされるとは、さすがに想像もしていなかった。
何となく、時夫さんたちは、隠していることがあるのだろうな、とは感じていた。卜部さんに関しては、スパイか何かなんじゃないかしら、と真剣に考えたこともある。でもそれは、あくまで時々変わった発言をする二人のおじさんに対しての他人事な想像で、まさか、4人もの不思議な力を持った人たちが、自分を見守るために(それだけではないけれど)想像を絶する活動を続けていたとは、思いもしなかった。
にわかには信じがたい話だったけれど、目の前の4人のうち2人が宙に浮いて見せてくれるに至って、その話を信じざるを得なかった。
初めて顔を合わせた平安装束の男の人は、しれっとした表情だったけれど、ずっと私と関わって来た残りの3人は、判決を受ける前の被告人のような顔をしていた。
「……やむを得ずとはいえ、長くあなたに、この身を偽って来た。本当に、かたじけない」
金時さんは、弱弱しくつぶやく。
源君は、うつむいたまま顔を上げなかった。
あの飄飄とした卜部さんまで顔を真っ青にしているのを見て、逆に私は、心配になる。
「あの、皆さん、大丈夫ですか」
その言葉に、3人は意表を突かれた顔をする。
「なんていうか……私のために、そんなに長い間、隠し事をして、お辛く、なかったですか」
さすがに付き合いが長い分、彼らが根本的に嘘がつけない人たちなのを、私はよく分かっていた。そして、とても、情深いことも。
3人は、言葉が出ない様子だった。
この夜のことを、私はきっと、ずっと忘れられないだろうな。3人の大人の男の人の頬を伝う涙を目にしたとき、私はそっと思った。
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