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「茨。まだ、俺たちと仕事をする気には、ならないか」
「……」
なぜかハイレベルなロックダンスを披露しているジャケパン弓男、卜部さんを眺めながら、安倍吉昌は静かな声でクサブキさんに尋ねた。横顔のまま黙っているクサブキさんの様子に、軽く息をつく。
「まあ、待つさ。やる気になったら、いつでも、戻ってきてくれ」
「……お前たちには、感謝している」
クサブキさんの静かなつぶやき。
「この世で再び、誰かとこのような時間が持てるとは、思いもしなかった」
安倍吉昌は何も言わず、ニヤリと笑うと盃をあおる。
白黒の世界に、くっきりとした満月が浮いている。
クサブキさんは、黙って私の手を握り、煌々と輝く満月と、その下で笑いこける仲間たちを眺めている。
その唇には、柔らかい微笑みが浮かんでいた。
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