睦月 満月 再訪

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 アルパカは元気だった。  意外に広々とした草原を自由に歩き回っているが、クサブキさんに指を鳴らして呼び寄せられ、私が撫でても、抵抗する様子はない。  カピバラは、気のせいでなければ、若干クサブキさんになついている気がする。 「……そろそろ、時間のようだ」  空がうっすらと白み始めていた。  クサブキさんが私に目を向ける。 「お教えいただいた案内(あない)をもとに、気や水の温みやらを、工夫することにする。恩に着る」 「あの、これ。動物たちの、生活環境や食べ物、世話の仕方、できるだけ、調べてきました。……今の時代の文字が、どれほどお読みになれるか分からないので、なるべく写真や図解を多くしたつもりですけれど……」  私はあわてて、クサブキさんの手元にノートを押し付ける。  彼は一瞬目を見開き、それから微笑んでノートを受け取った。 「これは、……かたじけない」 「次、来る時までに、ペンギンのこと、調べてきます」  彼の微笑みが深くなる。  暁の光が一条、私を貫いた。 「アマネ殿。次にお越しになるときは、ご自分のおんじきを、持参なさると良い」 「おんじき?」  彼が軽くうなずき、口を開きかける。  そこで、前回と同じように、唐突に私の世界は暗転した。
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