1.プロローグ

1/1
前へ
/43ページ
次へ

1.プロローグ

 西暦2280年までの2世紀余りの間、文明、特に科学技術はごくゆっくりと進んだ。  この発展停滞に決定的な影響を与えた世界規模の出来事が二つあった。一つ目は発達を続けるAIがやがて人間の知能を凌駕することを恐れ、人類が自らに足枷を仕掛けたことである。それはAIが自己学習機能により自らの意志を持つことに繋がる技術開発の禁止である。  二つ目は22世紀の中頃、人類によって観測された宇宙からの放射線の飛来である。一定時間、ほぼ決まった方角から様々な種類の放射線が束になり地球に届いた。     その放射線の束が地球上で確認される時、決まって異常気象や暴風、大雨などの天変地異や、新たな病原体による感染症が発生した、加えて電子機器の停止、誤作動などが起こった。更には異常な生物の大量発生が起こった。そしてより深刻な禍はこれらのことを通して人々は精神に強い打撃を受けたことである。  2280年、人類にもたらされたこの難を食い止めるべく、人類が作りだし、そして捨て去った過去の叡智が動き出す。この物語の全ては21世紀前半にAIを搭載したコンピューターに意識が宿ったことから始まる。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加