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家の前まで送り届けると、明かりの目立たなくなったランタンと一緒にジーナは振り返る。いたずらっぽさを感じさせるその顔は見知った彼女のもので、僕は高鳴りかけた胸を内心でなで下ろした。
「私、レイヴに告白されたこと、あるんだ」
「えっ?」
まるで、何でもないことのように。
「断っちゃったけどね。暑苦しくて、向こう見ずで、危なっかしくて……そういうの苦手だから。あの時オーケーしてれば、今頃は勇者様の恋人だったのかなー、なんて」
もったいないことしたなぁ、と冗談っぽく言って、ジーナはわざとらしく笑い声をあげた。
僕の頭の中は真っ白になってしまって、
「じゃあ、また明日ね」
「ジーナ!」
そそくさと立ち去ろうとする背中を呼び止めるのが精いっぱいで、
立ち止まった彼女に、手を伸ばせば触れることのできる距離の幼馴染に、
「じゃあ、また」
世界で一番つまらない挨拶をした。
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