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団長が別の青年団員の肩に腕を回すのを見届けて、サラダと穀物茶の代金を置くと酒場を後にした。ただでさえ害獣討伐で疲れているのだ、再び彼の相手をするような気力はもう残っていない。
夜風を感じて歩くうちに、背中に聞こえていたはずの賑わいは静かな虫の声にかき消されていった。静かな帰り道。こんなにも独りを感じるのは、レイヴが旅立った日以来だろうか。
レイヴとは幼馴染であり、無二の親友である。
ストリーブの家柄は他の村民たちに比べればいくらか優れたものではあるけれど、レイヴがその身分を理由に偉ぶることは一度としてなかったし、逆に、卑屈になる村民もまた一人としていなかったように思う。その上で彼は、いつでも日の当たる所にいて、皆に好かれて、年の近い僕らの間では当たり前のように中心に立っていた。それは、レイヴ・ストリーブが正義感の強く、剣の腕に長け、無邪気にも勇者に憧れる真っ直ぐな少年だったからなのだろう。
そんなレイヴの、無二の親友なのだった。僕は。
理由はきっと単純で、歳が近く、戦闘技術が昔からずっと競り続けていたからなのだ。たったそれだけの理由で、僕は勇者の親友だった。
俺が勇者になったら――。
いつか、幼い頃にレイヴと二人で村はずれの洞窟へ冒険をしに行ったことがある。冒険と言っても、近くの森林なんかに連れ立っては二人だけの秘密の場所を見つけるというだけの、ささやかなものである。勇者は数人のパーティーを組んで行動するものだということで、僕をそのメンバーに見立ててのごっこ遊びなのであった。
俺が勇者になったら、最初のパーティーメンバーはお前だからな。
特に危険なこともなく行き着いた洞窟の行き止まりで、陽光の差し込む大穴を見上げながらレイヴがそう言ったのを覚えている。無邪気で、勝手で、他愛のないその宣言は、光の柱に見下ろされたあの場所では酷く心強く、そして光栄に感じられたものだ。
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