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☆吾妻経次郎(ガマ)×表門紫
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戯六本を縄張としている藍染組の若き構成員、田津と宇坪が組事務所内にあるダイニングキッチンの清掃を終えた。
次の仕事に取り掛かる前にと、腹が減るのを見越して買っておいたサンドイッチやおにぎりをテーブルに広げて休憩に入る。
すると若頭の表門が入ってきたので、慌てて椅子から立ち上がり挨拶をした。
「すっかり綺麗になったじゃないか、お疲れ様」
さぼるなと休憩を咎められることもなく、ねぎらいの言葉までかけられ、若手ふたりがホッとする。
するとサンドイッチが包まれている、英字新聞を模した紙を表門が指さした。
「誰か、その名称が分かるか?」
田津がテーブルに置いていたスマホを奪うように掴み、即座に検索をかける。
「えっと、ワックスペーパーっていうらしいです!」
検索結果を見せられた表門は微笑むと「ありがとう。邪魔したな」とダイニングキッチンから去った。
「あ~びっくりしたぁ!表門さんと話すのって緊張すんだよ。なんつーか色気がヤバくね?」
「まったくだ……って、馬鹿野郎!大きな声じゃ言えないが、組長の元愛人らしい。余計なこと考えると、おまえ殺されるぞ」
と、宇坪が警告したが、田津はポジティブだった。
「でも元だったら、今は問題ねぇってことだよな?」
「はぁ?大ありだ!そもそも俺たちと、若頭じゃ立場が全然違うだろ!」
「ん?なんで『俺たち』ってオマエまで含まれてんだよ?」
「う、うるせぇっ!」
あきらかに動揺した宇坪をスルーし、田津は視線をワックスペーパーに向けた。
「表門さんって、食事は一流レストランとか料亭じゃん?料理する必要なんて全然ねぇだろうし……あ!もしかして仕事に役立ちそうな使い道を思いついたとか?」
「なるほど!ワックスペーパーは防水加工されているし、日常で目にするアイテムだ。例えば拳銃を包んで、食品っぽくカモフラージュしたり……」
と、真顔で議論しつつ、エプロン姿の表門を妄想してしまう二人であった。
その翌日。
休日である表門は単身で白夜区に赴き、ある人物と会っていた。
「だははっ!紫さん手作りの焼きそばパンが、たくさん入っとる!ワシの大、大、大好物じゃ。いつも、すまんのう!」
手土産として手提げタイプの紙袋を渡された男が、待ち切れないとばかりにひとつ取り出した途端、なぜか表門が慌てた。
「あっ!おい、ガマ!自宅に着くまで、パンはしまっておけ!」
しかしガマは、あることに気付いてしまった。
なんと焼きそばパンが、ピンクのハート柄のワックスペーパーに包まれていたのである。
「うおおぉ!こりゃたまらん!ワシへの愛を、ぶち詰め込んで作ってくれたんじゃな!」
「ち、違……っ!前回、焼きそばパンを作った時、紙で包んだほうが食べやすくなると思ったんだ!それでショップに行ったら、他のデザインが売り切れていて、そ、それしかなかっただけだ!」
全力で否定しつつも、ほんのり羞恥に染まった表門の横顔に股間を直撃されて、すっかり歩きづらくなってしまったガマであった。
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こちらのふたりは「【8】勲章狂の街編」に登場した、現時点(2022)で最も新しい登場人物になります。
書いていて楽しいカップリング(38歳×41歳、刑事×ヤクザ、武闘派×知性派)でしたが、これほど支持していただけるとは思っていなかったので驚きつつも嬉しかったです!ありがとうございます//!
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