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【第6位】
☆片岡×アザミ
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創立当初の「96」には班という概念がなく、後に初期メンバーと呼ばれる精鋭たちが、単独または協力し合って任務にあたっていた。
スケジュールの都合で「96」の連絡施設まで移動する時間が取れなかった上官に指定されて、ビジネスホテルの一室を訪れたアザミがチャイムを鳴らす。
すると地味に扉が開かれ、室内に敷かれた紺のカーペットに偶然似た色のスーツを着た片岡が招き入れた。
ふたりは応接ソファに向かい合わせで座り、即座にアザミが今回の任務の報告を開始する。
猥雑できわどいハニートラップに関する内容も含まれていたが、片岡の表情が最後まで変わることはなかった。
「ご苦労だったな」
すべての報告を聴き終わった片岡が、ねぎらいの言葉をかけると、
「いつもアンタは平気そうだよな。可愛い部下が、凶悪な悪党たちに抱かれてるってのにさ?」
と、アザミが皮肉な笑みを浮かべる。
「法にのっとっていては入手できない貴重な情報を、アザミのおかげで得られることには、感謝しているつもりだが?」
「ふぅん。謝辞だけかい?」
「お前を守る。容易く死なせはしないつもりだ」
「俺がアンタの役に立つ間は……だろ?」
「さすが精鋭だ。察しがいいな」
任務後に片岡と言葉を交わすたび、アザミは苛立ちを覚えた。
「96」に所属する前から数多くの男たちの心を見透かしてきたアザミでさえ、未だに片岡の本心を読むことが出来ないからだ。
警視庁の上層部に籍を置く一方で、決して社会に存在を知られてはならない非合法組織「96」の創立メンバーという怪物のような存在。
それを微塵も感じさせない地味な上官に一矢報いたいアザミが、濡れた桃花眼と艶やかな厚い唇で挑発する。
「ったく、そのムカつく口を塞ぎたくなっちまったぜ」
「好きにしろ。だが私は堕ちんぞ」
静寂が漂った後、アザミは肩をすくめてソファから立ち上がった。
「はいはい、分かったよ。無駄なキスはしない主義なんでね」
「あぁ、賢明だ。その口づけは任務にまわしてくれ」
アザミが客室を去り、ゆっくりと閉じた扉がカチャリと軽い音を立てる。
その瞬間、全身から汗が吹き出すのを感じた片岡は大きく息を吐くと、
「……特別な感情を持てば、過酷な任務にお前を送り出せなくなるからな」
と、地味に呟いたのであった。
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アザミの特殊なフェロモンの効果について判明するのは「96」が班という体制をとるようになってからなので、それまでは片岡も相当苦労したかも知れません(笑)
現在、作中にて片岡はアザミを「班長」と呼んでいますが、ふたりきりで会話をする際、初期の名残りで「アザミ」と名前で呼んでいる場面もあります( *´艸`)投票ありがとうございました//!
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