◆カップリング投票結果発表:後半

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【第6位】  ☆桜場(さくらば)×雅斗(まさと)  ☆一之瀬(いちのせ)×美智(みち)  ☆一之瀬×美智に変装したマリネ ※上記の3カップリングを合わせた短編です ※「【4】小悪魔作戦編」と「【5】白夜の獣宴編」の内容が含まれております ------------------------------  思わず周囲が視線を向けてしまうような美青年ふたりが、大勢の人々で賑わう都心にて久々のデートを楽しんでいた。  爽やかさを感じさせる背が高いほうの男性が、手堅くも効果的な戦略で店舗数を増やしつつあるスーパーマーケット「トクシンヤ」の敏腕店長、一之瀬。  そして少年にも少女にも見える、ショートヘアの似合う非常に愛らしい小柄な青年は、21歳の大学生、日比谷美智(ひびやみち)である。  彼は以前、アルバイト先にて憧れの上司であった一之瀬が異動したあと「トクシンヤ」を辞めて大学近くに引っ越しをした。  現在は卒業後に就職を希望している「小売業」を広く学ぶため、()えて「トクシンヤ」とはタイプの違うコンビニや大型スーパーでアルバイトをしている。  そんな美智が、隣りを歩く一之瀬をチラリと盗み見ては「なんだか、まだ夢みたいだなぁ」と喜びを噛みしめる行為を繰り返す。  てっきり人気絶大な上司に密かに憧れるアルバイトのひとりとして終わるだろうと諦めていたのに、奇跡的に恋人同士になれたのだから無理もない。  しかし一之瀬は多忙なため、なかなか会うことが出来ない。  そのため先日、休暇が取れたと一之瀬から連絡をもらった際に、美智は会いたい気持ちを堪えて「俺の予定は問題なく合わせられますが、せっかくの休暇ですから、ゆっくり休んでください」と返信をした。  しかし次に届いた「ありがとう。でも君に会うほうが元気が出るから」という言葉にノックアウトされて、本日のデートとなったのである。  美智は「一生分の幸運を使い果たしたかも知れない」と思わずにいられないほど幸せな気分に浸っていたのだが……。 「あっ……雅斗(まさと)君!」  思わず一之瀬が口にした名前に、向かい側から歩いてきていた青年が反応して視線を向ける。  一之瀬が職場の話題をする際に、その名前を美智は何度か聞かされていた。  しかし想像していた勤労青年のイメージとは異なり、やや目つきが悪くラフな私服であることから、やんちゃな不良青年という第一印象を受ける。  客商売だと見た目だけで理不尽な言いがかりをつけられることもあるため、現場では苦労するかもと美智は少し心配を覚えたが、雅斗がパアッと顔を明るくさせて、 「あ、一之瀬店長じゃないですか!こんにちは!」  と、元気に挨拶をした瞬間「そうだよね。一之瀬さんに『慎重に考えて積極的に行動できる貴重な人材』だって言わせるほど、期待の新人さんだったよね」と考えをあらためると共に安堵(あんど)したのであった。  通行の妨げにならない道の端に場所を変えると、一之瀬が雅斗に美智を紹介した。 「……それで、えっと彼は僕の恋人で、日比谷美智(ひびやみち)君です」  照れながらも「恋人」であると明言された美智が、感激のあまり自慢の脚で高層ビルを駆けあがり、腹の底から一之瀬の名を叫びたい気持ちを必死に堪える。  そんな美智と同じくらい顔を赤くして照れながら、雅斗がお辞儀をした。 「恋人さんなんですね……よろしくお願いします!あの、俺、一之瀬店長のおかげで正社員になれて、仕事を一から教えてもらって、本当に感謝してます……あ、えっと、こちらは俺が建築関係にいた時の先輩で、現在もお世話になっている桜場さんです。今日は買い物に付き合ってくれて……」  と、一歩さがって控えていた、たくましい体躯(たいく)の男を紹介した。  年の離れた兄弟じゃなかったのかと思いながら、頬を赤らめている雅斗の胸の内を察した美智が、ますます親近感を覚える。  しかし桜場と紹介された武骨な男は、低く響く渋い声で、 「桜場と申します。雅斗が大変お世話になっております」  と、礼儀正しく挨拶はしたものの、そのあと口を開くことはなかった。  単に人づきあいが苦手なのかも知れないと思った美智だが、この強面(こわもて)の男のどこに雅斗が想いを寄せる魅力があるのか、結局分からずじまいであった。  雅斗たちと別れた後、一之瀬と美智は予約していたレストランで食事を楽しんでいた。  ムードの良い店内と高級なワイン、美味しい料理に加えて、先ほどの一之瀬による「恋人発言」が最高に幸せな余韻(よいん)となり、美智を心地よく酔わせている。 「はぁ~、まさか現在の一之瀬さんの部下の方と偶然お会いするなんて思ってもいなかったから、すっごく緊張しちゃいました!」  ご機嫌な美智は軽く話題を振ったつもりだったのだが、途端に一之瀬が顔を寄せて、心配そうに小声で尋ねた。 「え、君、すごく緊張したの?お尻はかゆくならなかった?」  美智は一気に酔いが()めるのを感じたが、引きつりそうになる口角を上げて笑顔を作り、 「あ、ありがとうございます!でも大丈夫ですよ!以前と比べたら、かゆくなくなってきましたし、そのうち完治すると思います!」  と、全力で誤魔化(ごまか)す。  そして「こうして一之瀬さんと恋人同士になれたのも、あの占い師さんのおかげなんだから、この程度の誤解ぐらい、どうってことないさ!」と、健気に自分に言い聞かせたのであった。  一方、雅斗と歩いていた桜場が、ぼそりと尋ねた。 「雅斗君……あの一之瀬ってイケメン店長から、仕事以外の時に変なこと言われたり、やられたりしてねぇかい?」  まさか桜場から、そのようなことを言われるとは想像もしていなかった雅斗が目を丸くする。 「えっ!まさか!仕事が出来るだけじゃなくて、普段から社員や現場に親身になってくれる素晴らしい人ですよ?俺は店長みたいになりたいなって、目標にしているくらいで……」 「そうか……だが仕事が出来る人間がマトモとは限らねぇ。あんまりプライベートじゃ関わらねぇほうがいいと思うぜ?」 「は、はい……気を付けますね。ありがとうございます!」  普段の桜場からは考えられない発言であったが、きっと自分のことを心配してくれているのだろうと、雅斗は良きに解釈することにした。  そのうち「俺が尊敬する一之瀬店長に対して、桜場さんがヤキモチを妬いたんだったら嬉しいかも」という期待まじりの妄想までもが浮かんでしまい、再び頬に熱をほんのり感じる。  しかし「でも、それなら桜場さんだって、美智さんのこと、あきらかにガン見してたじゃないか……いくら俺とは比べ物にならないくらい、すごく可愛いからって……え?俺、なに考えてんだよ!」と逆に自分自身がジェラシーを感じていたことに気付かされる結果となり、恥ずかしさのあまり桜場を直視できなくなってしまった。  その頃、深刻な表情をして隣りを歩いていた桜場は「あのガキ、すっかり俺のことは忘れちまってたようだが……まぁ、それはいいとして、初対面の人間のパンツに手を突っ込もうとするような奴の恋人が、雅斗の上司だと?ふたりきりで残業する時もあるらしいが、本当に大丈夫なのか?」と、本気で雅斗の身を心配していたのであった。 ------------------------------  同率6位のカップリングに共通点があったので、合わせてみたら面白そうだと思いつき、このような形で短編にしてみました。  思いのほか長くなってしまいましたが、のんびりお楽しみいただければ幸いです!(^O^)投票ありがとうございました//!
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