1 流されて

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 1ー2 婚約破棄と追放  「ラムダ・トリ・ランダール公爵令息、お前との婚約を破棄する!」  この国、ターナンシェ王国の第一王位継承者である王女エリザベスの冷酷な声がホールに響いた。  それまで騒がしかったパーティー会場は水を打ったように静まり返った。  みなに取り囲まれて1人たっている僕は、ぽかんとエリザベスのことを見上げていた。  「な、なんで?」  なんとかそれだけ聞くとエリザベスは、僕のことを汚らわしそうに見て言い捨てた。  「とぼけるな!この淫売が!」  はい?  僕は、その言葉の意味がわからなくってしばらく立ち尽くしていた。  「どういうことですか?エリザベス様?」  問いかけた僕にエリザベスは、ぴしゃりと告げた。  「全てはもう明らかなのだ!お前が聖者様のことを淫らに誘惑し、その心身を汚そうとしたこともな!」  僕が聖者様のことを誘惑?  わけもわからずにキョトンとしていたら、エリザベスの後ろから黒髪に黒い瞳のエキゾチックなイケメンが現れて僕の方へと歩み寄ってきた。  「ラムダ、すまない」  その男は、僕のことを心配そうに覗き込んだ。  「私は、君の気持ちに答えられない」  はい?  僕は、ますますキョトンとしていた。   どういうこと?  そのエキゾチックなイケメン、ヤマト・ゴーランは、僕にすまなそうに告げた。  「君の気持ちはうれしいが、聖者である私には、どうすることもできないんだ。許してくれ、ラムダ」  「わかったか?ラムダよ」  エリザベスが勝ち誇ったかのように言い放った。  「ラムダ、お前を聖者ヤマト・ゴーランを誘惑し陥れようとした罪により王都から追放する!」  マジですか?  ヤマトを見ると彼は、つらそうに目を伏せた。  いやいやいや!  なんで?  どうしてこんな言いがかりをつけられてるわけ?  「何か言いたいことがあるか?ラムダ」  エリザベスがふっと微笑んだ。  「幼き頃より決められた婚約者だったのだ。言いたいことがあれば特別にきいてやってもよいぞ、ラムザ」  はぁ。  僕は、ため息をついた。  何が、特別に、だよ。  いきなりこんな言いがかりをつけてきて、さ。  今さら言いたいことなんて。  僕は、こめかみを押さえてうつむいた。  まったく。  なんで、こんな女と婚約させられてたわけ?  ヤマトも、ヤマトだし!  何が、「君の気持ちには答えられない」だよ!  いつも、ノリノリで魔力枯渇状態になった僕にキスしてきたくせに!  僕は、すぅっと息を吸い込むと、顔を上げた。  「僕は、一度だって自分からヤマトにキスをねだったことなんてありません!」  「嘘を言うな!」  エリザベスがふん、と鼻を鳴らした。  「お前は、嫌がる聖者様を無理やり押し倒しキスを奪ったのだ!聖者となったヤマト殿の心身を汚そうと企んだのだろう?聖者様からの証言もとっておる!正直に言え!ラムダ」  「僕は」  なんとか声が震えるのを押さえて僕は、声張り上げた。  「一度だってヤマトのことを汚そうとかおとしめようとか思ったことはない!」  僕は、エリザベスたちに礼をとると踵を返してその場を後にした。
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