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5ー9 恥ずかしい!
ディダルに抱えられて食事を食べさせられている僕のもとに一人の老婆とさっきの少女がやってきた。
「その方がヴァルナム様の神子か?ディダル」
「そうだ、婆様」
ディダルが答えるとその青灰色の髪を束ねた老婆が僕らの前で片ひざをつく。
「神子様、お楽しみのところを大変もうしわけございませんが、我々のためにそのお力をおかしいただけませんか?」
いやっ!
僕は慌ててディダルの膝から降りようとした。
楽しんでなんてないし!
「別に、楽しんでるわけじゃ」
僕が訴えると老婆は、ニコニコと微笑んだ。
「いやいや、お気になされずともよおございます」
老婆は、聞く耳もたない様子で話し続けた。
「神子様におかれましては、ヴァルナム様のご寵愛をお受けになったとか。そのような常練らざることがその身に起これば多少はたがのはずれても仕方がないことでございます。それよりもどうか我が孫ディダルをお好きに召されていただければ嬉しゅうございます」
何に?
僕は、もう泣きそうだった。
この人のこと、何のために僕がお召しになってると思うんですか?
僕は、なんとかディダルの腕から逃れようとしながら老婆に告げた。
「ディダルには、助けてもらったけど別に、楽しんでなんてないから!」
とにかくディダルから離れようとして暴れる僕にディダルが寂しそうにつぶやく。
「俺が嫌いなのか?ラムダ」
なんかしゅんとしてる?
僕は、ちらっとディダルの方を見た。
ディダルは、僕のことを捨てられた子犬みたいな目で見つめている。
そんな目でみるな!
僕は、急に申し訳ないような気がしてきてディダルにあわあわと言い訳した。
「いや、そういうわけじゃなくって、その、人前でこういうことするのは、良くないと思うというか」
「我々は人ではないぞ、ラムダ」
ディダルが屁理屈を言うので、僕は、きっぱりと言ってやった。
「普通に誰かの膝の上でご飯を食べさせてもらったりしないだろう?もうこういうの、恥ずかしいんだよ!」
「恥ずかしい?」
ディダルが真剣な様子できいた。
「俺の膝の上に座ることは恥ずかしいことなのか?ラムダ」
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