6 婚姻という呪い

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 6ー2 奪われて  羨ましい?  僕は、にっこりとルリアに向かって微笑んだ。  「なら、僕と代わってくれる?」  「もし、あなたと代われるならあたし、なんでも差し出すわ!」  ルリアがキラキラした笑顔で僕に答えた。  「だって、あの美しい辺境伯と、それと本物の王子様の二人がお相手なんて!」  僕は、ちっと舌打ちした。  確かにロイもディダルも嫌いじゃない。  けど、結婚するとなると素直に喜ぶことなんてできない。  だって。  僕は、こんなにも汚れているんだから。  僕の魔力のせいで二人とも汚されて、僕のことが好きなような気がしているに違いないんだ。  あのヤマトのように。  僕は、ヤマトのことを思った。  ヤマト。  僕のたった一人の友人だった男。  そして。  僕の初めてを奪った男。  僕を孕ませて、そして、性奴隷にするといった男。  僕は、ヤマトを思うとなんだか心臓がきりきりと痛むのを感じていた。  なんで。  僕たちは、こんなことになってしまったんだろう。  信頼していたのに。  友達だと思っていたんだ。  なのに。  ヤマトは、僕の呪われた魔力に溺れておかしくなってしまった。  ロイとディダルだってそうじゃないとはいえないじゃないか?  すべては、僕のこの呪いのせいなのかも。  この呪われた魔力のせいで二人は、僕を愛していると勘違いしているんだ。  誰も、僕のことなんて愛さない。  こんな呪われた僕のことなんて。  僕は、ふぅっと吐息をついた。  すべての元凶は、邪神ヴァルナムだ。  邪神ヴァルナムが僕のことを呪ったせいでこんなことになったんだ。  ヴァルナムの呪いさえなければ、僕は、普通に生きられた。  誰のことも惑わせることなく。  僕は、ヴァルナムが恨めしかった。  僕のことを神子といいながらもこんな呪いをかけた邪神を許せなかった。  できれば、復讐してやりたい。  だけど、相手は、邪神とはいえ神だ。  僕ごとき人間がどうこうできる存在ではない。  僕からすべてを奪った邪神。  ヴァルナムだけは、許すことができない。  なのに、僕は、やつの子まで孕まされているんだ。  
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