6 婚姻という呪い

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 6ー3 二度目の婚姻の儀  僕がぼんやりとしていると、ルリアが僕のことを覗き込んだ。  「ラムダ様?」  僕は、はっとして我にかえった。  ルリアは、真剣な表情をして僕に礼服のデザイン帳を差し出した。  「こんなのはどうかしら?」  差し出されたデザインは、美しい飾り袖のついた裾の長いチュニック風の礼服だった。  僕は、冷ややかに答えた。  「なんでもいいよ」  「じゃあ、これで」  ルリアは、にやっと笑った。  「下着も黒のレースでお作りしますわね、ラムダ様」  「いらないよ、そんなもの!」  即答する僕にルリアは、訳知り顔で微笑む。  「わかるわ。まだ、現実が受け入れられないのよね。よくあるのよ、マリッジブルーって。でも、きっと、あたしに感謝するわよ?ラムダ様」  ルリアは、そういうと立ち上がってガッツポーズをした。  「さあ、これから忙しくなるわよ!」  あわただしく部屋を去っていくルリアを見送ってから僕は、何回目かのため息をついた。  なんで?  年の瀬も押し迫ってくるこの冬の日に、小春日和の日差しが差し込んでいる部屋のソファにもたれ込んで僕は、目を閉じた。  僕は、一週間後に二度目の婚姻の儀式を行うことになってしまった。  それも、二人の夫と。  というか、性格には、三人の夫だった。  幸いなことに邪神ヴァルナムは、巨大な竜の姿をしているから直接僕の夫として僕に触れることはできないらしい。  婚姻式の場所は、暗黒神ヴァルナムの巣、じゃなくって聖域であるあの滝のある水辺だった。  
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