6 婚姻という呪い

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 6ー7 産まれてくるまで  「簡単ですよ」  エリアンが事も無げにいうのを僕は、ぼんやりと見つめていた。  婚姻の儀の打ち合わせに屋敷を訪れたエリアンに僕は、この窮状を訴えた。  するとエリアンは笑顔で答えた。  「今のラムダ様の発情状態はヴァルナム様のことをお体が求めているためのものでございます。だから、ヴァルナム様とちゃんと婚姻を結んできちんと迎え入れさえすればおさまりますよ」  僕は、呻いた。  ヴァルナム様って、あのスケベな竜のことだよね?  あんなのをきちんと迎え入れるなんて絶体無理でしょ?  ほんとに体が裂けちゃうよ!  「あんなものを迎え入れるなんて無理に決まってるだろ!」  僕は、エリアンに抗議した。  エリアンがおかしな表情を浮かべた。  「まだあなたは、ヴァルナム様とお会いしたことはないかと思いますが?おそらくあなたは、まだかのお方の真のお姿をご存じないのでは?」  「真のお姿がなんなのか知らないけど変な竜に悪戯されたことはある」  僕がいうとエリアンが吹き出した。  「ああ、あのヴァルナム様が飼っている竜のことでございますか?」  「飼ってる?」  僕は、キョトンとしていた。  確かにディダルは、あれをヴァルナム様と呼んでいたよね?  「あの竜ってヴァルナムじゃないの?」  「竜人たちは、勘違いしているようですが、あの竜は、ただのヴァルナム様の使い魔でございますよ、ラムダ様」  エリアンが僕にうっとりとした様子で話し出した。  「真のヴァルナム様は、とにかく素晴らしいお方なのでございます。その手つき足付き腰つき、すべてにおいて他の追随を許さぬお方でございますからね」  「そうなの?」  僕は、そのエリアンの漠然とした説明を黙ってきいていた。  エリアンは、はぁっとため息をついた。  「ただ今はまだこの世界にそのお姿を現されてはおられないのですが」  「いないのかよ!」  僕は、思わず声をあげてしまった。  エリアンは、僕の突っ込みに気を悪くしたのかムッとして答えた。  「そのための神子様の受胎でございますからね。ヴァルナム様は今、肉体を得るためにラムダ様のお体に宿り中なのでございますから」  エリアンが続けた。  「そのお腹のお子がお生まれになられたらあなた様の発動している呪いもおさまることでございましょう」  マジかよ?  僕は、信じられない思いだった。  要するに、僕が出産するまでこの発情状態は続くってことか?  
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