4.?

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4.?

「今回だけは見逃してやろう。二度とここらに顔を出すなよ」  ホワイトの言葉に、明け方スミス屋敷のそばで捕まった男は何度も頭を下げると、ドアの隙間から滑り出るように姿を消した。  誰もいなくなった部屋の中で、 「……さて、どうしたものか」  つぶやいたホワイトが、頭の後ろで手を組んで椅子の背にもたれかかる。  目の前の質素な保安官のデスクの上では、男から取り上げた証拠の品が――見たこともない大きさの宝石がついた、美しいブローチが輝いていた。  昼前にデボラと話したときには、途中で説明を遮られてしまったが、実はあの話には続きがあった。  何も持っていないように見えた(くだん)の泥棒だったが、捕らえたあとで入念な身体検査を行ったところ、やつは肌着に縫いつけたポケットの中に獲物を隠し持っていたのだ。 「……」  ホワイトは机の上のそれを手に取ると、窓から入る午後の光にかざす。  大粒のサファイアが飾られた、古風なデザインのブローチ。デボラの言っていた、祖母の形見の品で間違いないだろう。  だが、同時にこれは、持ち主であるデボラによって、決して彼女の部屋から盗み出されてなどいないと断言された代物でもある。  デボラと彼女の婚約者ジェラルド、それに、ひと癖ありそうなメイド。今日の捜査で話を聞いた三人が三人とも、口では「何も知らない」と言いながら、保安官である自分に何か隠しているようだったが。 「――やれやれ」  ためいきをつくと、保安官は人のよさそうな顔に苦笑を浮かべた。 「仕方がないな」
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