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次の日の朝。学校に向かい、大勢の生徒が歩いていく。その中に光(と真帆)がいるのを
見つけた遊は、迷わず声を上げて走っていった。
「光ちゃ――ん!…」
そしていつものように光を庇い「はいそこまで!!」と言って手を突き出し、真帆が遊を止めた。
遊がもうまたぁ!と言い眉間に皺を寄せて口を尖らせる。
「止めんなよ!」
「光を見なさいよ!明らかに嫌がってるでしょ!」
「だったら光ちゃん自身が 嫌だって言えばいい。真帆が庇う必要はないじゃん」
「それはっ…」
「それくらいにしとけ」
遊と真帆が騒いでいるのを見かけて吟も来て、また遊の首根っこをグイッと掴んだ。うわっ!と
掴まれた勢いで遊が二、三歩下がる。
「行くぞ。遅れる」
「ちょっ、吟っ!…うわぁん、光ちゃ~~~んっ」
吟に首根っこを掴まれたまま、遊は引っ張られていった。暴れる遊の肩越しに、吟がチラッと
真帆を見る。真帆は親指を立てた手を突き出し、ウインクして二ッと笑った。
吟はフイッと目を逸らした。
「何で止めんだよ!」
遊がさっきからずっとその言葉を繰り返している。吟は机にカバンを置き、
椅子に座りながら答えた。
「あんな大勢の前で騒がれたら恥ずかしいだろ」
「だって好きなんだもん。それなのに真帆が…」
「井緒完全にビビッちまってんだろ。もう少しやり方を考えろ」
「想いを伝えてれば、いつかわかって…」
“ただ想いを伝えればいいというものでもない”
“井緒が安心できる伝え方を、考えてみろ”
“今の井緒は、お前が想いを伝えた時どんな顔をしている”――――
「………」
遊は俯き、それ以降黙ってしまったが、それでも伝え続ければいつか想いは届くと信じた。
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