第四章 海竜の棲む島 四

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 子岬は、岬から見た時は近く感じたが、車で走ってみると、八キロメートル近く離れていた。障害物が無かったので、近くに感じてしまったのかもしれない。それに、小岬は観光地ではなく、ただ草が生えているだけだった。そこで、近くの空き地に車を止めると、村雨が道を探していた。 「あった、ここに下に行く道がある」  村雨も、ここに来るのは久し振りのようだ。 「当時…………事故の後、ここに来るのは禁止された。でも、俺は、何度もここに来ていた」  見つけ難くなっているのは、誰かが隠したせいらしい。木で塞いであり、乗り越えると、危険という看板があった。そして、そのまま先に進むと、手作りのような階段と道が続き、下へと降りてゆく事が出来た。 「小岬も、かなり高さがあったのですね……」 「三階くらいじゃないかな……昔は、もう少し、まともな道だった気がする。それで、自転車と荷物はここに置いていた」  通り添いだと、自転車を盗まれる危険性があったので、隠して置いていたらしい。その場所は、通りからは完全に隠れていた。 「ここで服を脱いで、海パンに着替えた」  今は海パンとは言わないのかもしれないが、当時はそう呼んでいたという。そして、ビーチサンダルとシュノーケル、水中メガネ、ハマグリを入れる袋などの装備を持って島に向かった。 「後で、泳いでみます」 「俺も行くよ……でも…………体力あるかな……」  ただ目指して泳げばいいというものではなく、潮に流される分を考慮に入れ、泳ぎ始める位置を決めるらしい。その潮を見極めが難しいので、村雨も同行すると言っていた。 「真っ直ぐに泳ごうとすると、体力を消耗する。だから、流されるのを気にせず、斜めに行く」  当時は、巻島と生駒が泳ぎ始めの位置を決めていたらしい。 「先輩達からコツを伝授されて、一人前になってゆく」  だから先輩は敬われるのだ。そして、秘密を共有する事で、仲間意識も生まれてゆく。 「田舎もいいですね……」 「いい事ばかりではないけどね」
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