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第一章 海竜の棲む島
洋麺軒 陽洋。オフィスビルや雑居ビルが立ち並ぶ駅前を抜け、山と野原自然公園に向かう途中に、そのレストランはある。木造三階建ての、赤い屋根。通り過ぎる人が、ハイジの家と呼んでいた。それは、雰囲気が山小屋だからだろう。
予約がなかなか取れない人気の店だが、モーニングとランチでは予約が要らない、その為か、いつも昼になると店の前に列が出来る。
俺、水瀬 佳樹は、そのレストランのコックをしている。
「佳樹ちゃん、ランチを追加」
「はい!!」
そして、陽洋は嵐のようなランチの時間を迎えていた。
「持ち帰りランチ三つ。サンドイッチもお願い」
「はい!!」
陽洋は、ディナーが美味しい事で有名なのだが、俺が働くようになって、ランチを始めた。それは、ディナーのコックが既にいたので、俺の為に始めたようなものだ。
だから文句は言えないが、近くにビジネス街があるので、ランチは戦場のようだ。皆、少ない昼休みに駆けつけるので、俺も急いで作り、少しでも休んで欲しいと思ってしまう。
「ランチ、持ち帰り、出来上がりました」
「はい!」
陽洋の庭には、イスとテーブルが置かれていて、女性客がキャキャアと騒いでいた。それも、いつもの事で、ここには名物の店員もいる。
「塩家、ランチ五個」
「OK」
店内には、びっしりと人が溢れ満席になっていた。その隙間を縫って、塩家がランチを運んでいた。
「ここ、美味しいだけでなく、店員さんがかっこいい!!」
「本当、目の保養になる!!」
塩家は、元有名子役で、今も役者をしていた。そのせいなのか、動作も見た目も、絵になっている。だから、塩家目当てに来る客も増えた。

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