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「ごめん、変なこと言ったよね。もしもこの先、とっても素直で可愛い子が現れたとしたら、マイクはその子に恋しちゃうんだろうなって思って……」
何を言っているんだ、この人は。何を。
私の戸惑いが顔に出ていたのか、お嬢様は慌てて付け足した。
「私なんてほら、すごく意地悪だし、冷たいし、マイクにとってもいい主とは言えなかったじゃない? いつ見限られても全然不思議じゃないっていうか……」
私はつい拳を握りしめた。
本当に、この人は何もわかっていない。何も。
黙り込む私に何を思ったのか、相手は畳みかけるように言った。
「私、これからは心を入れ替えようと思うの。なるべく目立つ真似はしないし、敵は作りたくない。皆に――マイクも含めてよ――分け隔てなく優しくしたい。そのために、マイクにも手を貸してもらいたいの!」
おかしい。
果てしない違和感が私を襲う。
競ってこそ、その頂点に立ってこそのお嬢様ではないのか。目立つの厭い、敵を恐れるなどあり得ない。優しさ――褒美は常に見せる必要はない。
違う。
違うのだ。
これまで噛み合っていたものが、音を立てて崩れていくようだった。
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