真っ白な君を汚したい

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真っ白な君を汚したい

 先ほど僕が描いたばかりの落書きを、息を乱しながら一生懸命消そうとする彼。  そのけなげな姿を見て、つい緩んだ口元。  それに気付いたのか彼は手を止め、ギロリと僕を睨んだ。 「綺麗にした側から、汚しやがって……!  お前ホント、何なの!?  何目的なの!?」  真っ白な彼の肌が、怒りのせいでほんのり朱に染まる。  その姿は、どこか扇情的で。   叱られているというのに、もっと意地悪をしたくなってしまった。   「……真っ白な君を見てると、なんか汚したくなるんだよね」  つい唇から零れ出た、本音。  クスクスと笑いながら、背後から羽交い締めにするみたいに抱き締めると、彼はますます苛立った様子で叫んだ。 「はぁ!?意味分かんないし。  お前なぁ……マジで、いい加減にしろよ!」  必死に身を捩り、僕の手から逃れようとする彼。  でも柔らかでしなやかで、僕よりもずっと小柄な彼の体を押さえ付ける事なんて、ホント容易で。  さらに困った顔を見たくて今度は馬乗りになり、床の上に押し倒した。 「可愛いなぁ……。  でもほら、良いの?  僕なんかに、捕まったままで。  もっと頑張って擦らないと、いつまで経っても終わらないよ?」  涙目のまま僕を見上げ、ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる彼。  ……ホント、可愛いが過ぎる。 「じゃあ俺を、今すぐ離せ!  っていうかどさくさに紛れて、また落書きすんな!」  こっそり片手を伸ばし、更に増やした落書き。  それに目敏く気付き、彼がまた大きな声で喚いた。          【たぶん、おしまい】
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