石橋と結城

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石橋と結城

「昨日はどうだった?」 放課後、顔を合わせると珍しく神妙な面持ちで結城は石橋に話かけた。 「水上の件は杏奈も俺達が知ってる程度しか情報はなかった… 中学校はもう転校してしまったらしい。 何処に転校したかは、わからないそうだ。」 「そうか… 今井が死んじまった事と水上は関係があるのかな?」 「どうだろうな… 本当にあの二人が付き合っていたと思うか?」 結城は宙を見上げた。 「信頼関係は強かったし、二人の時は他人を寄せ付け難い雰囲気はあったよな… でも付き合ってはないでしょ。 月子ちゃんが酷い目に遭ってないといいけど… 大人は汚いからね。」 「そうだな…」 石橋は、ふぅ と一つ大きなため息をついた。 噂の中には悪意の詰まった、聞くに堪えない卑猥な物まであった。 何を言った処で全ては推測でしかない。 石橋は今井が汚い大人ではないと思いたかったが、水上が連絡を絶つ理由は何かあったのだろう。 「それはそうと、杏奈ちゃんにはお前の気持ちを伝えられたのか?」 石橋は首を横に振った。 「何やってるんだよ。 せっかく月子ちゃんがグループラインまで作って応援してくれていたのに…」 「今はそういう気分じゃない。」 「お前変な所で頑なだよな… 部長の時は、部長たるものみたいな感じで結局言わずじまいだったし… 今だって月子ちゃんと今井の事は残念だったけどそれはソレ、これはコレでしょ。 でもそういうとこが石橋っぽいな。」 そう言って結城は寂しげに少し笑った。 石橋は何か言いたげだったが、結局何も言わなかった。 そして石橋も結城も黙りこんだ。 「なぁ この間の練習相手の京院学園だけど…」 話題を変えようと結城が話し始めた。 石橋達は夏休みに県外の高校何校かと合同練習をしていた。 「あぁ アイツだろ 俺たちと同じ一年の…」 「そうそう サウスポーのスリーポイントシューター、あいつヤバかったよ。」 「まるで紐でもついているみたいにボールがゴールに吸い込まれていくのな 凄すぎて対戦相手なのにウケた。」 「天才っているんだよな…」 「そうだな…」 二人はまた沈黙し空を見上げた。 もう日が傾き始めていた。 ハァ と石橋は再びため息を吐いた 「腹減ったな とりあえずマックでもいくか?」 「おっ いいねー奢りか?」 「バーカ そんな訳ねえだろ」 「ですよねー」 二人は笑うとマックに向かって歩きだした。
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