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PeepingTom
母の葬儀の日、ソレは初めて僕の前に現れた。
三年前に死んでしまったラブラドールに
うりふたつだったので、その飼い犬の名前をとってロキと名付けた。
母の葬儀の後、佐藤は泣き疲れていつのまにか自分の部屋で眠ってしまっていた
目が覚めるとソレはそっと自分に寄り添っている。
ロキの夢を見ているんだと思った。
もう骨になって埋葬されたロキ…
でも目の前にはロキそっくりの犬がいて
その身体は暖かく心地よかった。
背中にそっと鼻を押し当てると懐かしいロキと同じ匂いがした。
そして僕はまた眠りの中に落ちていった
それからロキは疲れた時や落ち込んでる時、たびたび現れるようになっていった
それはいつも決まって佐藤が1人の時だった。
僕は死んだロキの霊が自分を見守ってくれているのだと思い嬉しかった。
ロキは出現頻度を増やし、常に僕の傍らにいるようになった。
誰もロキの存在に気が付かなかった。
霊だから他の人には見えないのだろうと僕は思っていた。
次第にロキは、僕を離れて1人歩きをするようになった。
僕には一人で歩き回るロキが今どこにいるのかわかっていた。
それどころかロキとの距離が近ければロキの視覚や聴覚すら共有する事が出来た
誰も持っていない特殊な力…
僕はこの不思議な力を手にした当時、
有頂天になっていた。
そして考えていた計画を実行してしまった…
僕は以前からクラスメートの宮本花蓮に
恋をしていた。
花蓮が今どこで、何をしているのか知りたくて僕はロキに花蓮の後をつけさせた
そして僕が次第にエスカレートしていくのに時間はかからなかった。
僕はロキの視覚を使って彼女の生活を覗き見するようになっていった。
ロキの視覚はある程度近づかなければ得る事が出来なかったので、彼女の家の周りをうろつくようになっていた。
そして彼女の部屋での様子や風呂まで覗き見して自分の欲望を満たしてしまった
それでも何食わぬ顔で学校に行き、普通のクラスメートとして彼女に接していた
そんなある日、偶然ロキを通して彼女と友達の会話を聞く事になった。
「ねぇ花蓮 この間さー
クラスの佐藤が花蓮の家の辺りウロウロしてるのみかけたんだけど…
アイツ花蓮の事好きだよね?」
僕は息が止まりそうになった…
身体から汗が噴き出す。
「えーー何それ マジ?
ガチでキモいんですけど」
笑い声が響いた。
「花蓮は誰にでも優しいから勘違いさせちゃうんだよね」
「佐藤ってなんかオタクぽくって生理的にムリー
なんか舐めるような目つきで見てくるし」
「あー ソレなんかわかる」
そしてまた笑い声が響いた。
僕は彼女からロキを自分の元に引き戻した。
見なければ…
聞かなければよかった。
彼女の言う通りだった。
見せたくなかった自分の正体を見抜かれていた気分だった。
佐藤がどんなに彼女の生活を監視できた所で彼女は遠い存在だった。
もう僕には彼女にどんな顔で会えばいいのかわからなかった…
惨めだった。
涙が溢れ出し嗚咽がこぼれる。
そんな僕に戻ってきたロキがそっと寄り添った。
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