見鬼

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見鬼

相談もせずに高校を辞めてしまった僕に対し父は激怒した。 話合いの場がもたれたが、僕が本当の理由を話せるはずもなく母が亡くなった時の事情も絡んでお互いの溝は修復不可能なほどに広がってしまった。 結論から言えば僕は連絡先だけを父に残し教祖の勧めで教団の施設に入る事になった… 青山教祖の息子である4歳の渡はロキが大好きだった。 今日も父親の青山准一と共に佐藤の部屋を訪れロキとじゃれあっている。 「渡もロキに触れますよね、あれは遺伝ですか?」 「私は見鬼だから、もしかしたらそうなのかもな」 「けんき?」 「見る鬼と書いて見鬼…鬼を見ることができる。 幻獣も鬼の一種だから…」 「ロキが鬼の仲間なんですか?」 「鬼は人間の憎しみや嫉みなどマイナスの感情が具現化したものだ。 同じマイナスの感情でもロキのような幻獣は孤独や悲しみが元になっている。 ロキは君が自分自身の心の穴を埋める為に作り出した物だ… だから鬼は暴れるし、幻獣は人に優しい、方向性は全く逆だが同じカテゴリーに入る…」 渡とロキが追いかけっこを始めた。 微笑ましい光景だが、普通の人がみたら 渡が1人で走りまわっているようにしか見えない。 「君のような感情を実体化できる人間が憎しみに囚われると鬼が発生する。 鬼は術者を喰らい尽くすまで暴れ回る」 佐藤は無言で頷く。 「鬼は一種の呪詛だ… 相手を呪えば自分も呪われる、それでも相手を破滅させたい。そう思う人間が少なからずいるという事だ。 誰の心にも鬼はいる。 もし君が鬼を呼ぶなら私は躊躇なく君を殺すだろう。 鬼は遅かれ早かれ術者を憑り殺す。 それなら被害は少ない方がいい。」 そう話す青山教祖は少し悲しそうに見えた。 ただ憂いを含んたその表情でさえ佐藤には優雅で美しく感じられた… ロキが渡の顔を舐め始めた。 室内には嫌がりながら笑う渡の声が響く。
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