雨あがり

2/4
前へ
/4ページ
次へ
 つい先程まで、私は会社で揉めていた。  理不尽なパワハラと、どうでもいい正義感。そのぶつかり合いで、そりゃもう、すったもんだの大騒ぎだった。  いま考えればあの時、あのひと言が余計だったのだろう。でも、感情を心に納めておくなんて無理だった。  挙句(あげく)の果てに、辞める辞めないの話しになっちゃって…… 「じゃぁ私、辞めます!」  言ってやった。勢いで……  気持ちが先走っていたんだろう。もう後に引けない、なんて(かたくな)になるのは良くないけど。  この職場にはもう、私の居場所なんかすでに無い。「キミはもう要らないよ」って、絶対そう言われているような気がしていた。  いったい何だろう、私の存在価値って……  彼氏いない、親友もいない、親兄弟なんてずっと疎遠。私、生きてる意味無くない? あぁもう嫌。消えてしまいたいくらい、この存在自体……  どうしたらいいの、教えて誰か。私、(くや)しくて、切なくて、悲しくて……  出口の見えない脳内会議。私はそれを、ひとり延々繰り返していた。  でも……  この店に入ったことは、正解だったかもしれない。しだいに心に絡まったモヤモヤが、ほぐれて行くのを感じていた。  やっぱり、お酒の力なのかな。  よし…… 「あの、これ……おかわりください」  
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加