魔女裁判

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魔女裁判

「ま、魔女裁判……?」  ワケもわからず全身に戦慄が走った。  なんの事なのか、優美にはこの黒い魔獣のようなミノタウロスの言っている意味がわからない。 『ケッケケ、この世にお前よりもはいるか?』 「えッ? な、なによ。いきなりッて! バカなのォ」 『うるさい。お前に質問する資格はない』  またひっぱたく振りをした。 「キャァ、やめてェ……。顔は!」  必死に頭を振って避けようとした。 『さァ、お前の罪を(あば)いてくれよう』 「ぬうぅ、罪ッてェ……。なによ。急に」 『どれだけのヤツがお前に殺されたと思ってるんだ』 「し、知るか。私は一人だって殺してないよ」 『ウソをつくなァーー!』 「ううゥ……」 『この世にお前よりも悪いヤツがいるなら、名前を言ってみろ! そいつをお前の代わりに生け(にえ)にしてくれる!』 「い、生け贄ェ……?」 『さァ、三、二、一……』  ミノタウロスは有無も言わさぬ勢いだ。 「ちょッ、ちょっと待ってよ。急に……、私よりも悪いヤツなんて(いく)らでもいるじゃん」  激しく首を横に振ってみせた。 『ケェッケケ、タァァイムオーバーだ!』 「ま、待って。私が何をしたッて言うの?   こんなひどい目に遭わされる(いわ)れはないわ」   いくら優美が身体を揺すっても呪縛(いまし)めはビクともしない。 『ふざけるな。手下に命じて蒼井正義を虐待し、最終的には嫌がる正義を無理やり屋上から突き落としたクセに!』  牡牛の怪物は血走った眼差しで睨んだ。まさに怨み骨髄だ。 「うッううゥ、あなた? わ、わかったわ。蒼井正義……(くん)の。カレの家族なのォ」 『だったらなんだ。お前よりも悪いヤツはいないだろう。だったら悔い改めよ』  スタンガンを天高く振りかぶった。バチバチッと火花が散った。  「キャァーー! ま、待って。私じゃない。私が命令したワケじゃないのよ。そう……、あれは玲子よ。山野玲子が牛頭(ウッシー)たちに()れって言ったのよ。私じゃないわ!」  北浦優美は必死に釈明をした。 『フフゥン、連れを売るつもりか……』 「違うわ。マジで私は蒼井正義君には手を出してないわ」 『そりゃァそうだろう。お前は、いっさい自分の手を汚さずに、上から目線で命じていたんだろう。蒼井正義を!』 「違うッて言ってるでしょ。私は関係ないわ。全部、玲子が……、山野玲子が()れって言ったのよォォ」
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