往復書簡「満月コバルトブルー」

5月

矢野さん。見捨てるとか、そんなことしません。でも、学校へ行けていないのは、大変ですね。いっそ転校するのはどうですか？　そうすれば、今までと違う環境、違う人間関係、違う人種と出会えます。リセットです。そんなに言うほど簡単じゃないし、僕の場合、親の都合なんで仕方なかったからなんですけど。そういう選択肢もアリなのかなって思います。ちなみに僕は、新しい学校には全く馴染めていません。図書室ばかり行っています。その分読みたい本は増えています。田口。

＊＊＊

トオル君へ。しばらくぶりのお返事でごめんなさい。でも、私は元気です。どうやら私も転校することになりそうです。いじめに負けたようで嫌ですが、それでも、トオル君の言うようにリセットするつもりで頑張ってみようと思っています。追伸、新しい住所書きました。埼玉です。両親の実家があるんです。東京都はお隣さん。近くなりましたね。今度はそこにお手紙送ってください。よろしくお願いします。

＊＊＊

矢野さんへ。大変な時にお手紙ありがとう。僕は矢野さんが心配です。何かあったら言ってください。矢野さんが新しいところで頑張ると決めたことは応援しています。矢野さんは心が強いイメージがあります。だから、新しい場所でなら、きっとうまくいくと思います。月並みな言葉ですが、頑張ってください。

＊＊＊

トオル君へ。ありがとう。新しい学校は私のこと何も知らないから、どんな私でも受け入れてくれる感じがして、ちょっと期待しています。毎日こんなに楽しかったんだと思っています。遠回りして帰ることもなくなりました。トオル君とも同じ関東になったので、会いに行こうと思えば、会えますね。でも、トオル君は私になんか会いたくないかな？　私、頑張ってみます。頑張ります。

矢野サナ。