往復書簡「満月コバルトブルー」

7月

矢野さんへ。すっかり梅雨が明けました。夏もいよいよという感じの今日この頃です。お元気ですか？　いきなりの申し出に、僕は結構戸惑っています。別にイヤとかではないんです。でも、なんかこの関係って、会わないからこそ成立するものなのかな、なんて思ったりして……。両親の話をします。結局、離婚とか、そういうことにはならずに済みました。大人って本当にわかりません。昨日まで喧嘩していたのに翌朝はすっかり何事もなかったかのように、同じテーブルで朝食を食べるんです。平然と。僕にはその感覚がよくわかりません。東京に来てから両親は喧嘩することが増えたように思います。それもなんだか嫌で。以前のような家族の雰囲気ではなくなってしまっていて。うまく言葉にできなくて、すみません。それで、会うかどうかの話ですが、夏のテストが終わってからお返事してもいいですか？　よろしくお願いします。田口。

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この前、満月だったの、見ましたか？　私はとても感動しました。トオル君は家族思いなんですね。優しい気持ちがこちらまで伝わってきます。テスト終わりで、了解しました。いいお返事を期待して待っています。

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満月、見逃しました。田口です。僕は優しいのでしょうか。そんなこと言われたことないので、よくわかりません。本当に僕なんかと会いたいですか？

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会いたいです。追伸。一緒に新宿御苑歩きたいです。それで思いっきり遠回りして帰りたいです。

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わかりました。でも、遠回りは嫌いではなかったのですか？　一応、８月のスケジュールを書いて送ります。都合のいい日で予定を合わせができたらと思います。お返事お待ちしています。

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トオル君、ありがとうございます。お会いできるのがとても楽しみです。よろしくお願いします。矢野サナ。