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「あ、寛平ちゃん。おはよう~。何か面白い事件があったんだって。あ、ちょうどニュースでやるみたい」
俺の愛する妻の声。
『次の事件です。謎の変質者大手柄か。住宅街のど真ん中で突如現れた変質者が人命救助をした後、去っていくという何とも不可思議な事件がまた発生しました』
『本当に凄い大火事で、中に私の子供が取り残されたんですけど白いレオタード姿にフリフリとしたピンクのヒラヒラをいっぱい身にまとった、何故か紙袋を被った男性が現れて颯爽と燃え盛る家の中から子供を3人あっという間に救出してくれたんです!』
『結構筋肉質の男性でしたね。え? なぜ男性だってわかったかって? あー……あの、ほらレオタードを着ていたものだから、その……股間が? えぇ、結構大きk……』
――ブツッ。
「あー寛平ちゃん。何で消すの?」
「……いや、その……ほら、せっかくの休日の朝にそんな変態のニュースなんて見たくないじゃん?」
「でも人命救助してるし……それにほら。最近結構この変質者さん、よくニュースやってるよ?」
「え”? そ、そうなの?」
俺の手からテレビのリモコンを奪い取った妻が再びテレビを付ける。
『この謎の変質者の目撃情報は今月に入って次々と当局に寄せられており今回の大火事の他にも、線路内で立ち往生してしまった車を一人で動かしてドライバーを救ったり、急に産気付いて倒れた妊婦さんを迅速に適切な応急処置を施し病院に運んだり、川で溺れそうになっていた学生を助けたりと、続々と目撃情報が寄せられています。
どの事件でもやはり同じ格好で、白いレオタードにピンクのヒラヒラをいっぱい身に纏い紙袋を被って顔を隠していた、という事です。
また目撃者は必ず、その股間が大きかったと証言しt』
――ブツッ。
俺は思わず頭を抱えてしまう。
どうしてこうなった……。
「あーまた消した! もう、よっぽどその変質者さんのニュースが嫌いなのね」
「……レオタード姿に紙袋を被った男なんてロクなもんじゃないよ」
いや、本当にロクでも無い。
何が魔法オジサンだよ。普通変身っていったら髪型とか顔も変わるんじゃないのか? 顔とか体型がそのままってどういう事だよ。
それにピチピチのレオタードの衣装に強制的に着替えさせられちまうし……。
あの獣、マジで許さん。今度会ったらぶちのめしてやる。
――ウーーーッ、ウーーーーッ!
「ん? サイレンの音? パトカーかな……2台くらい走ってる? 何か朝から外が騒がしいね。何かあったのかな?」
「あー……ごめん。ちょっと朝の散歩してくるわ」
「あぁ、じゃあついでにコンビニに寄って食パン買ってきてくれる? 朝食のトーストが切れちゃっててさ」
「ん、わかった。じゃあ、サッと行ってくるよ」
「ありがとう~、お願いね。じゃ行ってらっしゃい。気を付けてね」
俺は妻に見送られ玄関を出る。
そして隠し持っていた紙袋を頭から被ってこう呟いたのだった。
「マジカルラブリー。マジカルプリティー。マジカルマジカル、ルンルンルン」
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