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先ほどまでの勢いはどこへやら、肝心の愛の告白は、最後の方はフェイドアウト。それでもハルにとってはこの上なく嬉しかったようで。なぜなら、智の方から愛の言葉を伝えることなど、これまでほとんどなかったからだ。
「ありがと! めっちゃ嬉しいわあ。でも俺の方がもっと好きやけど」
「なっ……!」
決死の告白にマウントを取られて、智は何か言い返そうとしたものの、なにも言い返せなかった。反論の余地がないことは、智が一番よく知っているからだ。
「……そこも含めて、いつもありがとうございます」
「珍しく素直やん」
「っ、ごめんなさい、いつも素直じゃなくって、扱いにくくて、ほんとに」
首が直角になるほどうなだれてしまった智に、慌ててハルがフォローする。
「ええよええよ、わかってて好きなったんやし! どしたんな」
「否定しないんだ……」
「そういうとこやって」
「チョコ、僕なんかが贈って、気持ち悪くないですか?」
「はあ?」
「女の子でもないし、こんなデカくて可愛げもないし」
唇を尖らせて俯く智をハルが下から覗きこむ。
「女の子でもないしデカいけど、めっちゃ可愛い」
「ふぁ……?」
「そもそも女の子やなくていい」
「はい……それは」
「好きな人、あげたいと思った人にあげたらええし、好きな人からもらえたら嬉しい、シンプルやろ」
「……そうですね」
椚田と同じことを言っていて、心中穏やかでなくなったが、それも一瞬のこと。ハルの体温が智に触れたからだ。ハルが智の首に腕をまわしてきて、胸と胸とが密着する。
「えーちゃんにも、ちゃんと用意してるで」
ハルが智の耳元に口を寄せて、熱っぽく囁いてくるものだから、智の鼓動が急激に早まる。
「そう、なんですか」
「今すぐ見たい?」
「……いえ。今はもうちょっと、このまま」
赤面する智を見上げて、ハルは嬉しそうに笑った。
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