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「ハイこれは俺から! ハッピーバレンタイン」
差し出されたのは、ハートを抱えたテディベアのぬいぐるみ、というか、フィギュア?
「?」
「今日一日かかって作っててん。楽しかったわあ、洋菓子作りにも目覚めそう」
「洋菓子?」
「ん。食えるで、それ」
「へえ! すごい!!」
智はにわかに目を輝かせてテディベアに見入った。ぱっと見はぬいぐるみにしか見えないその二十センチほどの小グマ、顔を寄せるとなるほど甘いチョコの香りが漂う。
「可愛い! やっぱりハルさんすごい!」
「いやぁ、それほどでも……」
「可愛すぎて食べられません」
「えっ」
「かわいそうでかじれませんよ、こんな可愛いくまちゃん!」
「えー、あー……うん……」
これはこれで困ったことになった、と頭を掻くハルと、まだ瞳をキラキラさせて小グマを愛でる智だった。
ハルがなんとか智を説得して食べさせ、そっくりのぬいぐるみを一緒に買いに行った、とは後日談。
【おわり】
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