絆、芽吹く

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 智は気になっていた。  最近正常位ですることがなくなった。あるときはうつ伏せにさせられてその上からハルが覆い被さってきたり、横向けに寝転んだところからの挿入だったり。  ハルは「いろいろ試してみたいから」とワクワクした様子で言ってくるものの、智はそんな気分ではない。なんだか見透かされているような気持ちだった。 「ハルさん……」 「ん?」 「もう前みたいに、しないんですか」 「前みたいって?」 「その、向かい合って」 「ああ……したいん?」 「……はい」 「姿勢、辛ないん?」  どきっとした。やはりハルにバレているのだろうか? しかしもう、昔の智ではないのだ。 「大丈夫です」 「無理せんでええねんで」 「顔……見える方が、安心する、から……」  赤くなってモジモジとしながら智がそんなことを言うので、ハルの理性は一瞬にして風前の灯火である。 「ほ、ほなそうしよか」  一旦抜いて体勢を整え直し、久々に向かい合って繋がってみると、ふたりに以前より一層の興奮をもたらした。 「やっぱりこれがええな」 「……はい」 「えーちゃんのエロい顔も見えるし」 「っ! やだ、もう……っ」  智がハルの顔を見ることができるということは、ハルからも智の顔が見えるということ、すっかり頭から抜け落ちていた。 「痛ない?」 「大丈夫、です」 「こっちも」  ハルがそう言って智の鼠径部を撫でる。 「んぁんっ、大丈夫、です」 「ほんまか? 変な声出して」 「ちがっ、今のは」  脚の付け根を撫でられただけでも、ビクビクするぐらい感じてしまった。以前は痛さに向かっていた神経も、気持ちよさを感じる方向へ全振りしているのだろうか。  実はあれから、智は毎日地道に例のストレッチを行っていたのだ。元来真面目な性格からすれば、一度決めたらきちんと継続するのは容易いこと。その効果が早速表れたようだ。痛みに邪魔されず快感を捉えることにだけ集中できること、ハルの顔を見ながらできること。二つが相まって、いつも以上に気持ちいい。 「ハルさんが僕にしてくれること、全部、気持ちいいです」 「っもう! またそないして無自覚に煽るやろ! ほんまに」 「?」  智は何故怒られているかわからない。何か失言したっけなと頭を巡らせていると 「これでも、暴走しそうになんの抑えてんねんからな」 「どういうこと……?」  もっと激しくガンガン掘ることだって出来るし、そういう抱き方も嫌いではない。けれども智にはそんな抱き方をしてはいけない、とハルは毎回セーブしているのだった。ハルの全てを根元まで智の中に埋めきったことも、まだない。あくまでも優しく、智が気持ち良くなることが最優先事項で、ハルの嗜好は二の次だ。 「なんもないて。もっと気持ちようなろか」  乱暴に扱って、壊れてしまってはいけない。  智の気持ちいい顔、喜ぶ顔が見たい。痛みに歪む顔なんて見たくない。  そんな気持ちで今夜も智を抱いているハルなのだ。
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