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「……ハルさん、もしかして気づいてたんですか?」
「何が?」
事が済んでからだを綺麗にして、真っ暗で静まりかえった部屋。さて眠りにつこうかというとき、智がハルに問いかけた。
「僕が、股関節痛がってること」
「ダイレクトやな」
ハルは軽く笑ったが、智は恥ずかしさで泣きそうな顔になっている。
「いやぁ……実は、ストレッチの動画見てもて」
「!!」
がばっと寝返りを打ってハルに背を向けた。
「ちょ、えーちゃん?」
「だめもうしにたい」
そんな声がぶつぶつと聞こえてくる。
「いやいやそんな恥ずかしがることないやろ」
「陰でこそこそ努力してたこと知られたのもちょうはずかしいだめはずかしぬ」
「そんなことより俺は、な」
幾分落ち着いた声でハルが話し出したので、智のぶつぶつ声が止まった。
「言うてくれたらええのに、って思たよ。一緒に解決策考えたり、いろんな体位試してみたりするんも、二人で一緒にああでもないこうでもない言いながらやったら楽しかったんちゃうかなって」
「ハルさん……」
「今回のことに限らず、なんか思うことあったら言うて欲しい。勝手に遠慮したり恥ずかしがったりせんと。そんなみずくさい仲やないやろ?」
言いながら、棚上げもええとこやなあ、とハルは内心思う。
「……そう、ですね。わかりました。……ハルさんもですよ?」
「え、うん?」
「僕なんかじゃ頼りないかもしれないけど……。話してもらえるってことは、信頼されてるってことですもんね。僕もこれからはきちんと話しますね」
「信頼……」
こちらに向き直ってにっこりする智の素直さに萌えながらも、自身を省みるハルだった。
【おわり】
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