夏の憂いごと

2/8
前へ
/38ページ
次へ
 皆さんこんにちは、永倉智です。季節はすっかり夏、じっとしているだけでも滝汗が噴きだすような時期となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。  さて、最近僕は、ある悩みを抱えています。暑いながらも体調は良好、仕事も順調、なんですけど……。 「ただいま!」 「お帰りなさい」  たった今元気よく二人の部屋に帰ってきたのは、僕の……こ、恋人の、ハルさんです。仕事は在宅だから、いつも僕が帰ると家にいてごはんの支度をしてくれているんですけど、今日は何やら夜に打ち合わせがあるとかで、僕より遅く帰ってきました。こんな時間まで大変だなあ。疲れただろうな。 「遅なってごめんな! もう飯食うた?」  疲れているだろうに、真っ先に僕のごはんの心配をしてくれるハルさんです。 「はい。帰りに食べて帰ってきました」 「ん、そか」  あ、そうだった、僕の悩みの話ですが―― 「えーちゃん! 見てみて」 「なんですか?」 「わらびもちもろてん、食べよ」 「わーい」  わらびもち、美味しかったです。  で、悩みなんですが、ここのところなぜだか、 「明日ゴミの日やから、部屋のゴミ集めてくれる?」 「あ、はい」  ゴミは全部集め終りました。  またいつ邪魔が入るかわからないので単刀直入に言いますが、この頃ハルさんがあまり僕に触れてくれないんです。一緒にテレビを観るときなんか、前だったらソファに並んで座ってくっついて観てたのに、今では僕がソファに座るとハルさんは床にゴロ寝して観るんです。  眠るときも、よく、……その、ぎゅって、してくれたり、してたのが、なくなって……もっと言うと……僕が気が進まないながらも応じていた、よ、夜の営み的な、あれ、その……あるじゃないですか! あれですよあれ! ……そのあれも、もう、ずっとなくて……  以前は週に一度は言い寄られていて、渋々受け入れていたんですが……もう二週間以上、ないんです……。  僕は元来、人と触れあうことがあまり得意ではなく、ハルさんに触れられるのだって最初はなかなか慣れなくて、嫌だなあと思いながら触れられていた時期もありました。でもそのうちだんだん慣れてきて、嫌じゃなくなってきて、ハルさんの手に触れられるのが心地よくなって、気持ち良くなって……ってそんな風にしておいて、今度は触れてくれなくなるって、ちょっとひどくないですか?  なので、僕は今夜、ついに行動に移すことにします。いつも触れられるがままだった僕ですが、今夜は僕からハルさんに接触を試みようと思います。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加