夏の憂いごと

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「俺もやで」  にっこり笑ってぎゅってしてくれました。嬉しい。それにしても、ハルさんの汗ばむからだと上から下まで密着して喜んでいるなんて、以前なら絶対考えられなかったな。他人から服ごしに軽くタッチされるだけでも嫌悪感マックスだったのに、肌と肌、しかも、た、体液まで……  あ、もうハルさんのことは『他人』じゃないと認識してるってことか。  ハルさんに出会って、愛されて、どんどん自分が変わっていく。それが怖いと感じる時もあったけど、今はアップデートしてるんだなって思えて、誇らしいとさえ思っています。 「……ごめんな」 「何がです?」  事後、ハルさんは脱兎のごとくシャワーを浴びて、またベッドに戻ってきました。そしてぴったりくっついて腕枕してくれています。 「なんちゅうか……最近のこと」 「ああっ、僕が勝手に勘違いして変なことを言っちゃったから……! 忘れてください、すみません」  淫乱発言を思いだし、顔から火が出そうになります。さっきまでの行為よりもよっぽど恥ずかしい…… 「いや、勘違いちゃうんやわ」  それからハルさんは鼻を掻いたり目を泳がせたりわかりやすく動揺しながら、最近触れてくれなくなった理由を、珍しく歯切れの悪い感じで話してくれました。  ハルさんはとても汗っかきで、体臭も強めだと思っていて、いつも僕が帰る直前にお風呂を済ませているそうです。僕の帰りが予想外に早くてお風呂が間に合わなかったときなどに露骨に距離を取っていたようです。  なんていうか、乙女……?  不覚にも萌えてしまいました。  そしてサクセスじゃない方の性交については、いくらお風呂に入りたてでも行為の途中で汗だくになってしまうから、暑くなってきてからは我慢していたんだそうです。そういえば、あんなにエアコンが効いた部屋でも顎から汗が伝ってたもんなあ……  出会った頃はすでに暑かったけど、ずっと僕が接触はおろかかなり距離を取って接してたから、気づかなかったんですね。  付き合って初めての、夏、なんだなあ。
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