レッスン10

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レッスン10

「佐奈子さん、あなたは・・・」  瞼の奥で微笑む笑顔に問いかけながら、一緒に練習した戯曲『紙風船』の台詞を呟いてみる。 『米国フラー建材会社のターナー支配人が一日目黒文化村を訪れて、おぉロサンゼルスの縮図よ』 ・・・と。 『いいから川上さんとこへ行ってらっしゃいよ』  気怠い、でもハスキーなんかじゃなく透き通っている・・・強く受けるとひしゃげてしまう、軽く打つとポーンと弾む、まるで紙風船そのモノのような佐奈子さんの声が、俺の耳元に響いて来る。
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