レッスン2

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レッスン2

 すぐにふたりで、どういうシーンを創るか話し合うことになった。  その日は、佐奈子さんは仕事があるというので打ち合わせは何もできなかった。  俺は思い浮かんだちょっとしたシーンを台本にして、それを上演するようにすればどうだろう!?と思いたち、早速いくつかのシーンを書いてみた。  翌日、それを佐奈子さんに見せた。 「そうねぇ、これじゃあコントよね」 「ダメですか!?」 「ダメっていうか、台本なんかにしてしまわないで、もっとフランクにふたりが世間話してさ、でもふたりはお互いを好き合っているのだからそうした会話の中からいつのまにか・・・っていうのが自然なんじゃないかしら」 「そうかぁ・・・気持ちの流れかぁ・・・」 「彼は彼女が好きで、彼女も彼が大好きで、そういうことが大前提なのだけど、キスしたいっていう蓄積の感情っていうのかなぁ、キスなんかチュッてしちゃえばいいんだけど、そういうキスじゃきっとないでしょ!?」  ラブシーンを演じたふたりがその後、岸田國士の戯曲『紙風船』の夫婦役を演って一般公開するという段取りなのだ。時代背景をを考えると大正時代の新婚夫婦、ということになる。新婚、と思っただけで俺は勃起しそうになる。  研究所の近くの公園のベンチに座って、岸田作品を読み合わせ、その中でそういうシーンに発展して行けるか、なんて試みたけど、なかなかそういうことには至らなかった。  俺と佐奈子さんはずっと一緒にいるようにした。そうして休みの日もいろんなところに出かけて行った。  すべてが役作りだと思っていた。
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