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レッスン5
阿佐ヶ谷のハイツにいつものように訪ねると、ドアの前に立っただけで、いつもと違う違和感を感じた。
俺は経短の先輩から紹介された夏休みにスイミングスクールの小学生を霧ケ峰高原にキャンプに引率するアルバイトに出かけ、満喫して帰って来たところだった。
あんな話やこんな話をしてあげようと思っていたのに・・・。
俺がノックしていると、
「あっ」
隣の粕谷さんという女性が、顔を出した。
「徳永さん、引っ越されたみたいですよ」
「??」
徳永さん??佐奈子さんは、冴島佐奈子という名前だった。
「徳永さんて、あのぉ・・・」
「いつもいらしゃって仲良くされてましたよね」
「あ、でも、彼女、冴島佐奈子さんという名前ですよ」
「何言ってるの、徳永志摩子さんよ」
俺は混乱した。何か悪い冗談ドッキリみたいなものをかまされている気がして来て腹が立ってきた。
「大家さんに聞いてきます、大家さんはどの部屋の片ですか」
「ここの管理は駅前の田中不動産ですよ」
「あ・・・」
俺は田中不動産へ行って事情を話した。
「こっちも困ってるんだよ、家賃踏み倒されてさぁ」
とバチカン禿の黒縁の眼鏡の親父さんがシャガレタ声でこれ見よがしに煙草に火をつけた。
「冴島さんどこに行かれたかわかりますか」
「誰だ冴島って・・・??」
「あのう」
「徳永志摩子さんだよ206号室の女性は」
「実家の住所とかわかりますか!?」
「んまぁ、あそこは又貸しでね、徳永さんの前に二宮さんて方が入ってたんだけど、その人が急に秋田に帰ることになってそのまま徳永さんが入ってくれてさ、9月が契約更新だったのでその時にまぁ手続きを代えようと思ってたとこだったのになぁ、まさかなぁ」
「二宮さんに連絡することは!?」
「もうしたよ、けんどそんなことまったく知らないって」
「その人の住所を教えてもらえませんか」
「なんで!?・・・君にそんなの教えられるものか」
「だって俺は・・・」
「俺はなんだい!?」
親父はニヤッと厭らしい目つきで俺を見た。
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