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レッスン6
演劇研究所の学務に連絡すると、
「H君仲良いんでしょ!?後期のお金が払い込まれていないから連絡してたんだけど繋がらなくなってるのよね、知らない??」
と逆に訊ねられる始末だった。緊急連絡先は福岡県庁の電話番号だったのよ、と可笑しそうに学務の女性はケラケラと笑った。
アルバイト先だと教えてもらっていたところへ行くと、
「冴島さん??」
「そんな人いないよ」
俺は説明した。
「あっ、じゃそれ吉川美奈さんじゃないかなぁ、シフトスッポカサレて・・・」
と店長は愚痴を言い始め、それを聞いているうちに俺はなんだかもうウンザリしてしまった。
佐奈子さんは一体何をどうしてこんなふうに・・・と思ったけれど、まったくそのことがリアルにつながって行かなかった。
「もし連絡が点いたら教えてよ、俺個人的に彼女に3万貸してるんだよね」
「えっ」
「君立て替えてくれない!?」
「そんな・・・」
「嘘だよ、君高校生!?」
「いえ」
俺は演劇研究所の名前を言い、彼女ともそこで知り合ったのだと正直に言った。
「女優ねぇ・・・元風俗嬢だからなぁ」
俺は眩暈がした。
「ま、そんなことは関係ねぇな、関わらない方が君いいよ、まっ、それも関係ねぇか」
男はまだ何か言いたそうだったけど、舌打ちのような呟きを繰り返しながら店の中に入って行った。
俺は途方にくれた。
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