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やめられない
今日の仕事はもう終わった。彼と会ったあとに仕事なんてないし、借金だってない。彼を誑かし、カネを得るのが仕事。
でも、彼に会うのも面倒臭くなってきたし、彼もこれ以上カネをつくれないみたい。最初はどんと百万を貢いでくれたのに。そろそろ新しいカネづるを開拓したほうがいいかもしれない。
これから他の仕事を、まともな仕事をしようなんて思えない。しようとしても雇ってもらえないことは分かってる。もうあとには戻れない。
繁華街を歩いていると、未成年らしい少女がいた。家出だろうか、稼ぎに来たのだろうか。
でも、裏社会に染まりきる前にやめさせてあげたい。
「コレあげるから、もうこんなとこ来るのやめな。若いあなたには、未来があるのだから。ここに入ったら、抜け出せなくなる。他のまともな仕事にも付けなくなる。未来を潰すことはないわ」
少女に三万円を渡して、立ち去る。
納得してくれたかはわからない。でも、昔の自分と重なってしまって仕方なかった。自分を救いたかったのかもしれない。
だからかな。
自宅に警察官がいて詐欺容疑で捕らえられた瞬間、「よかった」と安堵の息がこぼれた。
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