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「今度、皆で焼き鳥パーティしよう! 流石に冷凍庫がいっぱいになっちゃうから、二人にもあげるよ。どれがいい? モモにつくねに、ネギまに皮に……」
志生さんがビニール袋から箱を取り出し、小分けになったパックを見せてくれた。百花はささっと、つくねとモモをもらっている。志生さんは、にこにこしながら、俺にも全種類を分けてくれた。
「琉貴は二人分な」
「あ、ありがと。志生さん……」
俺はなぜか、普段は食べない鶏皮まで、しっかりもらってしまっていた……。
「ただいまー!」
「あ、透也さん、おかえりなさーい!」
台所からぱたぱたと玄関に走っていくと、透也さんがちょうど鞄を置いたところだった。靴も脱がずに、じっと俺を見ている。頬は赤いし、目も心なしか潤んでいる。
……外は、そんなに寒かったのかな?
「透也さん? 外、寒かっ……」
最後まで言うことが出来ず、長い手が伸ばされ、スーツの体にぎゅっと抱きしめられた。俺の唇に透也さんが唇を重ねる。ひんやりとした唇は、熱が移って、すぐにあたたかくなった。スーツの表面はうっすらと夜気を纏って冷たい。体がぶるりと震えると、透也さんは慌てて俺から体を離した。
「ご、ごめん! 外、すごく寒かったから、服だって冷たかったよね」
「そんなこと言ったら、透也さんの方がずっと寒かったでしょ。今日もお疲れ様」
両手で透也さんの頬を包むと、やっぱり冷たい。ぱちぱち目を瞬いてる透也さんが可愛くて笑うと、手に手が重なった。頬から剝がされた手の平にキスをされて、胸がどきんと跳ねる。
「……るき」
「と、透也さん。ご飯にしよ! お腹すいたでしょ」
俺は急いで台所に戻った。動悸が激しくなって、すーはー、すーはーとシンク前で深呼吸する。
あーもう……。透也さんは自分がイケメンだって自覚がないんじゃないかな。毎日見ててもドキドキするのに、ちっともわかってないんだから。
まずはご飯だ、ご飯、と俺はスープを温める。冷凍焼き鳥をもらえるなんて思ってなかったから、ショウガ入りのつくね団子と千切り大根を、和風味にしてコトコト煮ておいた。スーパーでひき肉と半分に切られた大根が安くなってたから。
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