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透也さんは、「必要なだけ使って」ってカードを渡してくるような人だけど、俺は食費分のお金を預かってやりくりする方がいい。暮らしって、いつどう変わるかわからないからね。
串の手元の部分にアルミホイルを巻き付け、鶏皮とモモをフライパンに交互に並べる。モモには少しだけ酒を振れば、ふっくらする。
蓋をして焼いている間に、タレ作り。醤油に砂糖にみりんに酒をよく混ぜておく。
部屋着に着替えた透也さんが、リビングに入った途端に呻いた。
「ぅあああ……。いい匂いがする……」
「今、ちょうど塩が焼けたとこだよー。ビールも冷えてるから先に食べててー!」
湯気の上がった焼き鳥のお皿を透也さんに渡して、今度はタレだ。フライパンを軽く洗ってもう一度肉を焼く。焼きあがりに混ぜたタレをかければ、じゅわわわーっと音がして、醬油と砂糖の香りが台所にたちこめる。
今度は照りの付いた焼き鳥を持ってテーブルに急ぐと、透也さんが茶碗や箸を並べて、スープをよそってくれたところだった。
「あれ、先に食べてればよかったのに」
「琉貴と一緒に食べたかったから……。でも、皮は一本先に食べちゃった。カリカリで美味しかった」
まるで子どもみたいに嬉しそうな顔に、思わず笑ってしまった。
「かんぱーい!」
二人でグラスに注いだビールで乾杯する。
「……あっつぅ! 美味い!」
「大丈夫? 焼きたてだから気をつけて」
焼き鳥は、皮目をパリッとするまで焼いたおかげで、すごく美味しかった。皮が特に好物なんだと嬉しそうに頬張る透也さんに、思わずこちらも笑顔になってしまう。
志生さんに、たくさんもらったことを話すと、少しだけ透也さんの眉が寄る。
嬉しそうな顔がしゅんとしたのを見てどうしたのかと聞けば、透也さんは小声になる。
「……志生さんは、すぐに琉貴を笑顔にさせるんだ。羨ましい」
「へ?」
「志生さんの話をする時の琉貴は、いつも楽しそう」
……そうかな?
「本当は、志生さんだけじゃない。他の誰かじゃなくて僕が、いつも琉貴を笑顔にしたい」
透也さんが顔を上げて、まっすぐに俺を見た。自分の頬が一気に熱くなるのがわかる。
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