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「と、透也さんといたら、俺はいつも、笑ってるよ! た、楽しいから!」
俺は思わず、テーブルの上の500のビール缶を握って、そのままごくごくと一気に飲んだ。酒に強くもないのに。ふーっと息をついたら、透也さんは目を丸くしていた。
「俺、焼き鳥の皮は苦手なんだ。でも、弟が……由貴が好きだったから、家で焼く時はいつも用意してた。あいつが居つかなくなってからは、そんなこともなくなって」
「……琉貴」
「でも、透也さんが好きなら、いつでも作るよ。透也さん、俺、……めーわく、じゃない?」
心の奥にそうっと隠れていたことがするりと口に出た。
透也さんは、いつも優しくて、たくさんの愛情で包んでくれる。でも、時々、全部が夢みたいで不安になるんだ。親を亡くして、弟に裏切られて、恋人だって失くした。いつの間にか何もなくなっていたことが、隙間風みたいに、すっと心をよぎることがある。
透也さんは体を近づけて、とても優しいキスをくれた。
「……あのね、琉貴は僕の特別なんだ。琉貴がいなくなったら、僕はもう二度と笑えない」
静かな言葉に、目の奥がじんと熱くなった。
顔も体も熱い。頭がぼうっとする。
涼しい風が時折吹いてきて何だろうと思ったら、透也さんが団扇でぱたぱた仰いでくれていた。透也さんに膝枕をされているのがわかって、あれっと思う。
いつの間にソファーにいるんだろう。
「と……やさん?」
「あ、起きた」
「おれ……、ねてた?」
「ビールたくさん飲んで、焼き鳥食べて、もっとビール飲むって言うから冷蔵庫から持って来たら、床に転がってた」
「……えええええ」
さすがにそれは恥ずかしい。ただの酔っぱらいじゃないか。
起きようとしたら、透也さんの手がよしよしと俺の頭を撫でた。
「琉貴は頑張ってるからねえ。よしよし」
「とおや……さん、だって。いつもお仕事して……がんばってる」
「うん、でも、僕が元気なのは、琉貴が側にいてくれるおかげだから」
イケメンは、歯が浮くような言葉を言っても許されるんだろう。俺はふわふわと幸せな気持ちになって、へへ……と笑ってしまった。
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