1334人が本棚に入れています
本棚に追加
正直、隣に並んで歩いていても、気後れしてしまうことが多い。すれ違う人たちは皆、透也さんに目を留める。中には、怪訝な顔をして俺を見る人までいる。そんな中で堂々と手を繋ぐなんて無理だ。
でも、透也さんは聞くんだ。毎回真面目に、期待を込めた瞳で「ここなら手を繋いでもいい?」って。頷くと飛びきり嬉しそうに笑う。
透也さんの手は、俺よりも大きくて、いつだって温かく包んでくれる。絶対、かなわないなあと思う。
「あ、琉貴! 見て!」
透也さんはショッピングモールの中に入ると、嬉しそうに声を上げた。
吹き抜けになった場所に巨大なクリスマスツリーが飾られている。
「僕はこの時期が好きなんだ。何だかわくわくする。ハロウィンが終わった途端、一斉にクリスマスに向かうのってすごいよね」
「うちは母親がイベント好きだったから、ハロウィン前からクリスマスまでは家の中もずっと賑やかだったなあ」
「へー! 僕のところは静かだった。ハロウィンも何もしなかったし、ツリーも僕や兄が小学生の頃までしか出してなかった」
透也さんの家って、何だかすごく上品なイメージがある。そして、余計なことだけど、透也さんのお兄さんもイケメンなんだろうか。
想像をめぐらす俺の顔を、透也さんが不思議そうにのぞき込んでくる。
「……どうしたの?」
「あ、いや、お兄さんも透也さんとよく似てるのかなって」
「兄? ああ、兄は何ていうか、しっかりしてて生真面目なんだ。僕はそうでもないんだけど」
俺は顔のことを言ったつもりだったけれど、透也さんは性格のことだと思ったらしい。
「えっと、顔が似てるのかと思ったんだ」
「ああ、そっち? よく似てるって言われてたよ」
この美しい顔が二つか。小動物並みに脈が早くなりそう。
「……琉貴?」
「並んでるの見たら、ちょっと心臓がもたないかもしれない。透也さん、すごくイケメンだし」
透也さんは困ったように眉を寄せた。
「る、琉貴にそう言われて嬉しい。嬉しいけど、兄には会ってほしくないな……。兄の方が僕よりずっと……カッコいいから」
最初のコメントを投稿しよう!