番外編 聖なる夜に

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「い、一緒に……暮らしているので」 「……は?」  イケメンがびっくりしたような目で見るので、とりあえず中へどうぞ、と言った。透也さんのお兄さんの眉が顰められる。背中に視線が刺さりまくっている。  リビングはさっきまで暖房が入っていたので暖かいが、俺の心は嵐のようだった。透也さんの家族は4人で、ご両親とお兄さんがいることぐらいしか知らない。  ソファー周りに目を走らせ、散らかしてなくてよかったと思いながら、何とか笑顔を作った。 「あの、お茶、淹れましょうか?」  イケメンが頷き、何がいいかと聞けばコーヒーと言われた。ちらりと見れば、コートを脱ぐ仕草も優雅だ。  ああ、ハンガーがいる。  玄関に走って取って来たハンガーを手渡すと、じっと涼し気な瞳に見つめられた。 「ありがとう。君は、いつからここに?」 「えっと、五か月ぐらい……です」 「五か月!」  ひっ! と叫びそうになるのを飲みこんだ。目の前のイケメンの視線から逃れるように、俺は台所に走った。    何で? と言われるのは目に見えている。  どうしよう。何て言えばいい?  恋人です。  透也さんとお付き合いしています。  ……無理、無理、無理!  初対面なのにそんなこと言えるわけがない。  友人だ、友人で行こう。自分の心の臆病さに情けなくなるが、何事も段階ってものがあるはずだ。  手が震えるのを堪えながら、何とか二人分のコーヒーを淹れてリビングに運ぶ。透也さんのお兄さんはブラック派だった。  一口飲んで、イケメンの口元が緩んだ。 「美味しい」 「あ、よかったです。ちょうどクリスマス用のブレンドを買ったので」 「今日はイブだからな。透也は土日は休みだったと思うが」  俺は透也さんに急な出張が入ったことを話した。イケメンは頷いて、兄弟で似たようなことになっているな、と言った。  仕事の代打で近くまで来た。久々に弟に会おうと連絡を取ったら少しも繋がらないので、直接来たのだと言う。  ふと、カップをソーサーに置く指が目に留まる。長くて綺麗な指は、透也さんとよく似ていた。
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