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「達也さん、もうすぐチキン焼けます!」
「わかった。サラダと前菜はもう出来る。琉貴くん、バゲット切ってくれるか?」
「はい! ……あ、ここのパン美味しいんですよね。駅前の!」
「いい香りがしたからな。ブリーチーズも買ってある」
腕まくりをした透也さんの兄、達也さんは料理が上手だった。俺たちはサラダとスープを手分けして作り、テーブルに運んだ。達也さんがここに来る途中で買って来たものを合わせると、十分な聖夜の食卓が出来た。
骨付き鶏腿肉のローストにシーザーサラダ。グレープフルーツの生ハム巻き。トマトスープに軽く焼いたバゲット。ブリーチーズと赤のスパークリングワイン。
「うまそう!」
「おいしそう!!」
二人で同時に呟いたことに気づいて、顔を見合わせて笑った。
乾杯! とグラスを合わせる。少し甘めのワインは透也さんが琉貴でも飲めるからと選んでくれたものだ。一人きりで過ごすはずの食事が思いがけず楽しいものになる。
ワインは飲みやすくて、すぐに頭の中がふわふわとしてきた。
達也さんが大きなチキンを切り分けてくれる。その動作がとても綺麗でいいなあと思う。どうぞ、と渡してくれたお皿を見て嬉しくなる。
「どうした?」
「達也さんも透也さんも、何ていうか一つ一つの所作が綺麗ですよね。俺、チキンは手に持ってかぶりつけばいいと思ってたけど」
「……ふふ。これは流石に大きいだろう?」
「うん。透也さんが大きいのがいいって言うから探したんです。あ! 美味しい!!」
パリパリの皮は、達也さんが溶かしバターを塗るといいと教えてくれたのでやってみた。香ばしくてすごく美味しい。
夢中になって食べていると、どんどん切り分けてくれる。ちらっと見ると、達也さんは楽しそうにワインを飲んで生ハムやチーズを摘まんでいる。
「透也と一緒に住んでいるなんて、どんな子かと思ったが。安心した」
「あんしん?」
「今までみたいに外見ばかりいいのが張りついていたら困るなと思ったんだ」
……え?
俺は思わず、手にしていたワインをごくりと飲み干した。
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