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「矢田君、今日・・・早かったね。」 「はい、弟が来るということでしたので。 何かありましたか?」 「いや、仕事ではないんだけど。」 お父さんが少し上がった息のまま武蔵に話し掛け、武蔵と私を交互に何度か見てきた。 それから拳君の方を・・・。 「拳、久しぶりだな。 立派になって。」 「おじさんこそ・・・。」 そう言いながら拳君は笑いを堪えたような顔でお父さんを見ている・・・。 お父さんはそれに珍しく困った顔で笑っていて・・・ 「拳、大学はこっちに出てくるのか? うちの会社でバイトするのはどうだ?」 「製薬会社でしょ? 俺はお兄ちゃんと違ってそういう頭はないからな。」 「人だよ人、人事部。」 「う~ん・・・でも、製薬会社とか興味ないからな。 どこにも入れそうになかったら入れてくれる?」 「それだとうちに来ることはなさそうだな。」 お父さんが珍しく面白そうに笑って、その顔のまま拳君を見詰めた。 「拳、ちょっといいか? 唐揚げ持ってきていいから。」 「いいよ、俺もおじさんに話があるから。」 そんなやり取りをして、お父さんと拳君はリビングから出ていった。
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