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そして、それから数分後・・・。
今度は拳君を見送るために玄関へ。
「小町さん、色々ありがとうね!」
「何もしてないけどね?」
「いやいや、俺のことよりもお兄ちゃんのこと!!」
「武蔵?」
それには首を傾げると、拳君は嬉しそうに何度も頷いた。
「お兄ちゃんって、一見優しい人に見えるタイプだったけど、しばらく話すと刃もある人だったら。
あんな風に話せる人じゃなかったんだよね。」
「言われてみれば・・・出会った日は私にお説教してきた。」
「凄いね、それなのにめげなかったんだ。
お兄ちゃん結構キツかったでしょ?」
「グサッときたよね。
でも・・・女子高生だったからかな?
武蔵が言うには女子高生は最強らしいから大丈夫だった。」
私が笑いながら答えると、拳君は武蔵とよく似た優しい笑顔で私を見ていた。
「小町さんも頑張ってね、お兄ちゃんのこと。」
「うん、ありがとう・・・。」
「高校生の俺からしてみたら、小町さんについては何に悩んでるのか意味不明な感じだけどね。」
「そうかな・・・?」
「それはそうでしょ、大人な関係とか俺にはまだよく分かんないし。」
「大人な関係?」
私が聞くと、拳君は一瞬驚いた顔をした。
その顔は武蔵と何となく似ていると思った時にはまたすぐに笑顔に戻った。
「小町さんも23歳だしお兄ちゃんも今年29歳だからね!!
男子高校生からしてみたらマジで大人!!」
「それはそうだろうね。
私も高校3年生だった時、24歳の武蔵のことが凄く大人に見えた。」
私の言葉に拳君が笑い、少し大きめのバッグを左手で持った。
「じゃあ、また東京に来る時にはお世話になるかも!!」
「うん、またいつでも来てね。」
そう言ってこの屋敷の扉から出て行った拳君。
その後ろ姿は武蔵の後ろ姿とは違って、ガッシリとした背中をしていた。
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