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会社で聞くまで我慢出来ず、私から真坂さんにメッセージを送ってしまった。 そしたら真坂さんからすぐに返信があって・・・ 武蔵は、小池さんのことを“凄く良い子”と言っていたらしい・・・。 “仕事も頑張ってる” “話も一生懸命してる” “気遣いが出来る” “優しいし人を思いやれる気持ちもある” そんなことを、武蔵が言ったらしい。 それが書かれている画面を、震える左手でまたスマホを持って見下ろした。 姫だけではなく、武蔵まで・・・。 武蔵まで、小池さんのことが好きで・・・。 小池さんは可愛くて・・・。 とても、可愛い人で・・・。 営業成績も良くて・・・。 取引先の人からも営業部長からも好かれている・・・。 女の子達から疎まれてしまうくらい、男の人達からのウケが良くて・・・。 そのくらい、可愛い人で・・・。 あのくらい可愛い人だと、武蔵からこんな風に褒めて貰えるのだと分かった・・・。 “ツンケンしてる” いつか誰かに言われた言葉を今になって思い出した。 私はツンケンしている。 二十歳の誕生日、あの日の夜・・・ 武蔵から“好きな人はいない”と言われてから、私はきっとツンケンしている。 だって、大人の女にならないといけないと思っていたから・・・。 小池さんみたいな、あんな女の子でもいいなんて・・・思わなかったから・・・。 あんな女の子みたいな感じだった私を、武蔵は好きになってはくれなかったから・・・。 だから、だから・・・ 私は、大人の女になろうとしていたのに・・・。 衰えた“小町”が・・・ 衰えた“加賀社長の一人娘”が・・・ “娘”というか、“30歳の女”が・・・ 洗面所の鏡の中で苦しそうに顔をしかめている・・・。 「30歳になった今からでも、可愛くしてもいいのかな・・・。」 そう呟いた“加賀社長の30歳の娘”が、小さく笑っている・・・。 「どうやって笑うんだっけ・・・。」 どうやって、小池さんみたいに可愛く笑うんだっけ・・・。
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